潜在ニーズとは
潜在ニーズとは「顧客自身が気づいていないニーズ」を指します。顕在ニーズは「顧客自身が自覚しているニーズ」なので、対照的な言葉です。
潜在ニーズと顕在ニーズを説明するのに、氷山の例えがよく用いられます。
顕在ニーズは表面に出ている一方で、潜在ニーズは水面下にあるのがわかります。
そして、体積は潜在ニーズのほうが大きいです。
そのため、潜在ニーズを掘り起こすことで、大きなビジネスチャンスの発生が期待できます。
潜在ニーズを考える目的
潜在ニーズを考える目的は、以下のとおりです。
- 顧客が本当に求めていることを知るため
- 顧客が求めていることを提供して満足してもらうため
- 競合との差別化を図るため
潜在ニーズを的確に捉えることで、顧客が本当に求めている商品やサービスを提供し、顧客満足度の向上につながります。
顧客満足度を高めることができれば、企業の業績の向上も期待できます。
潜在ニーズと顕在ニーズの違い
潜在ニーズと顕在ニーズを簡単にまとめると、以下になります。
- 顕在ニーズ:顧客が自覚しているニーズ
- 潜在ニーズ:顧客が気づいていないニーズ
これだけだとわかりにくいと思うので「ダイエットサプリ」を例にします。
【ダイエットサプリの例】
- 顕在ニーズ:痩せたい
- 潜在ニーズ:運動せずにラクして痩せたい
ダイエットサプリを購入するユーザーは「痩せたい」というニーズは自覚があります。
一方「運動せずにラクして瘦せたい」というニーズは、自覚がないかもしれません。
仮に自覚がないとすると、これは潜在ニーズになります。
ニーズとウォンツの違い
ニーズと似た言葉に「ウォンツ」があります。
ウォンツとは、簡単にいえば「ニーズを満たすための手段」です。
- ニーズ:理想と現実のギャップを埋めたい欲求
- ウォンツ:理想と現実のギャップを埋めるための手段
例えば「ダイエットして5キロ痩せたい」というニーズをもった女性がいるとします。
上記の場合、ウォンツは以下が考えられます。
- 運動するのがめんどうだから、ダイエットサプリを買いたい
- ひとりだと挫折しそうだから、パーソナルトレーニングを受けたい
理想である5キロの減量を達成するための手段として、ウォンツがあります。
潜在ニーズとインサイトの違い
潜在ニーズとインサイトも似たような言葉なので、わかりづらいですよね。
それぞれの意味を簡単にまとめると、以下になります。
- 潜在ニーズ:自覚はなくても、指摘されると気づけるニーズ
- インサイト:自覚もないし、指摘されても気づけないニーズ
例えば、ダイエットして痩せたいと考えている20代の男性がいたとしましょう。
潜在ニーズが「ダイエットしてモテたい」だとすると、インサイトは「異性からモテる魅力的な自分でありたい」などが考えられます。
「異性からモテる魅力的な自分でありたい」というインサイトは自覚もなければ、指摘されても「そんな欲求があるのかな?」と半信半疑になります。
しかし、このインサイトが意思決定に大きな影響を与える根源的な欲求です。
潜在ニーズもインサイトも、顧客の欲求である点は同じですが、階層が異なります。
潜在ニーズの見つけ方
ここでは、潜在ニーズの見つけ方を解説します。
- ヒアリングを実施する
- インタビューを実施する
- アンケートをとる
- Webデータから見つける
潜在ニーズの見つけ方がよくわからない方は、参考にしてみてください。
ヒアリングを実施する
潜在ニーズを見つけるために、ヒアリングを実施するのがおすすめです。
顧客の悩みや不満、要望などを詳しく聞き出すことで、潜在ニーズを見つけやすくなるからです。
【ヒアリングを実施する際のポイント】
- 顧客の言葉をそのまま記録する
- 顧客の感情の変化に注目する
- 顧客の行動パターンを観察する
- 担当者の主観で考えないために、別部署の意見も参考にする
インタビューを実施する
インタビューは、消費者の深層心理や考えを探るために効果的です。
顧客との対話を通じて、商品やサービスに対して抱く感情や購買体験について理解を深められるからです。
【インタビューを実施する際のポイント】
- 参加者の発言を傾聴する
- 事前に質問することを考えておく
- 参加者の属性を明確にしておく
- 必要に応じて掘り下げる質問をする
- アイスブレイクを交えてリラックスした雰囲気でおこなう
アンケートをとる
多くの顧客の潜在ニーズを分析したい場合は、アンケートをとりましょう。
自由回答形式の質問を設けることで、顧客の生の声を集められます。
【アンケートをとる際のポイント】
- アンケートの目的を明確にする
- ターゲットを絞り込む
- 顧客が答えやすい質問文を作る
Webデータから見つける
Webデータを分析することで、潜在ニーズを見つけることもできます。
潜在ニーズを見つけるためのWebデータは、以下があります。
- Webサイトのアクセス解析データ
- 顧客がSNSで投稿したコンテンツ
- インターネット上での口コミ
- 検索キーワードなど
自社商品やサービスに関連するWebデータを分析し、潜在ニーズを見つけるのに役立てましょう。
【Webデータから潜在ニーズを見つける際のポイント】
- 信頼できるデータなのか確認する
- 顧客の行動パターンを分析する
- 検索キーワードを基にペルソナを設定する
潜在ニーズを引き出す3つのコツ
潜在ニーズを見つけるだけでなく、引き出すコツも解説します。
- 現状の不満を洗い出す
- 理想の未来を聞く
- 調査したデータを基にニーズを深掘りする
現状の不満を洗い出す
潜在ニーズを引き出すために、顧客の現状の不満を洗い出すことが大切です。
顧客が日常的に感じている問題点や不便さ、ストレスなどを詳しく聞き出すことで、潜在的なニーズが見えてきます。
【顧客から現状の不満を洗い出すコツ】
- 顧客の一日の行動を時系列で聞く
- 商品やサービスの利用場面を詳しく聞く
- 顧客の感情の変化に注目する
理想の未来を聞く
不満を洗い出すだけでなく、顧客の理想の未来も聞きましょう。
現実の不満と理想とのギャップを明確にすることで、潜在ニーズを引き出しやすくなるからです。
【理想の未来を聞き出すコツ】
- 顧客の夢や願望を聞く
- 質問して顧客の価値観を明確にする
- 現状の制約を取り除いた状態を想像してもらう
- 理想的な商品やサービスの具体的なイメージを聞く
調査したデータを基にニーズを深掘りする
調査したデータを基に、ニーズを深掘りする方法もあります。
顧客から直接得た顕在的な情報だけでなく、深掘りして潜在ニーズを見つけましょう。
【調査したデータを基にニーズを深掘りするコツ】
- データの信頼性を確認する
- ユーザーが行動した背景を考える
- 異なる属性ごとにデータを細分化する
- データから仮説を立てて検証する
潜在ニーズを活用した成功事例3選
ここでは、潜在ニーズを活用した成功事例を3つ紹介します。
- セブン&アイ
- LINE
- メルカリ
潜在ニーズをうまく見つけられない方は、参考にしてみてください。
セブン&アイ
最初に紹介するのは「セブン&アイ」です。
セブン&アイは、顧客の潜在ニーズを掘り起こしたことで「セブンカフェ」や「金の食パン」などを大ヒットさせてきました。
【顧客の潜在ニーズ】
- 「安くておいしいコーヒーが飲みたい」
- 「手軽においしい食パンが食べたい」
上記の潜在ニーズを掘り起こしたことで、成功したと考えられます。
このヒットで、コンビニでコーヒーを買う消費行動が浸透したり、食パン専門店が数多く出店されたりする社会現象を生みました。
参考記事:セブン&アイ|セブン&アイの挑戦
LINE
2つ目の成功事例として紹介するのは「LINE」です。
LINEは、スマートフォンで利用できるメッセージングアプリとして、2011年にサービスを開始しました。
当時は携帯電話でのSMS(ショートメッセージサービス)が主流でしたが、LINEはスマートフォンの普及に伴い、ユーザーの潜在ニーズを的確に捉えていました。
具体的には、以下のとおりです。
- 無料でメッセージのやり取りができる
- スタンプや絵文字で感情を表現できる
- グループでのコミュニケーションが容易である
SMSでは実現できなかったコミュニケーション体験を提供したことで、今や誰もが知る国内インフラとして成功しました。
メルカリ
最後に紹介するのは「メルカリ」です。
メルカリは不要品を売買できるフリマアプリとして、2013年にサービスを開始しました。
それ以前にも個人間で売買できるサイトは存在していましたが、メルカリはスマートフォンでの利用に特化し、ユーザーの潜在ニーズを掘り起こすことに成功しました。
具体的には、以下のとおりです。
- スマートフォンだけで簡単に出品や購入ができる
- 売上金を手軽に受け取れる
- 不要品を手軽に売って金銭を得られる
スマートフォンでの簡単な取引を実現したことで、多くのユーザーがフリマアプリの利便性に気づきました。
メルカリは潜在ニーズを見抜き、それを独自のサービスとして提供したことで、最大手のフリマアプリに成長しました。
潜在ニーズを考える際の注意点
最後に、潜在ニーズを考える際の注意点を解説します。
潜在ニーズを見つけることに失敗しないためにも、注意点を押さえておきましょう。
主観で決めつけない
潜在ニーズを考える際に、担当者の主観で考えるのは避けたいところです。
主観で決めつけてしまうと、潜在ニーズを見落としてしまう恐れがあるからです。
潜在ニーズを見落とさないためにも、主観で決めつけるのは避けましょう。
【主観で決めつけないためのポイント】
- 自社の先入観を捨てる
- 顧客の視点で考える
- データに基づいて判断する
- 社内メンバーで話し合う
- 外部の専門家の意見を取り入れる
顧客の言葉を信用しすぎない
顧客の言葉が本心とは限らないので、信用しすぎるのも問題です。顧客の言葉を信用しすぎて失敗した事例として、マクドナルドが2006年に販売した「サラダマック」があります。
当時、マクドナルドはお客様にアンケートやインタビューをおこない、自社に関する調査を実施していました。すると「マクドナルドはヘルシーではない」「サラダを食べたい」などの意見が多く集まりました。
このお客様の意見を参考にして生まれたのがサラダマックです。
しかし、サラダマックの販売は失敗し、短期間で販売を終了しました。
のちにマクドナルドは「メガマック」や「クォーターパウンダー」などのボリュームたっぷりのメニューを販売し、大ヒットしました。
お客様の意見を忠実に反映したサラダマックは失敗し、ヘルシーと真逆の商品がヒットしたのです。
このような事例もあるので、顧客の言葉を信用しすぎないようにしましょう。
まとめ
顧客のもつ潜在ニーズと向き合うと、以下のメリットがあります。
- 顧客が本当に求めていることがわかる
- 顧客が本当に求めていることを提供できる
- 競合との差別化を図れる
潜在ニーズを的確に捉えれば、顧客が本当に求めている商品やサービスを提供し、顧客満足度の向上につながります。
顧客満足度が高まれば、企業の業績の向上も期待できます。
この記事の内容を参考にして、顧客の潜在ニーズを探してみてください。