コンセプトとは
コンセプトとは、商品やブランドなどの基本的な考え方、方向性を決める指針です。
例えば「健康志向のカフェ」を開く場合、単に飲食を提供するだけでなく「オーガニック素材を使う」「無添加の食事を提供する」といった要素がコンセプトに含まれます。
コンセプトを明確にすることでデザインやメニュー、マーケティング戦略などの全体像が統一され、消費者にも商品やサービスの魅力が伝わりやすくなります。
ブランディングにおけるコンセプトの重要性
ブランディングにおけるコンセプトの重要性を解説します。
- マーケティングを展開するうえでの方向性が定まる
- 競合他社と差別化できる
- 商品やサービスの魅力を最大限に伝えられる
マーケティングを展開するうえでの方向性が定まる
コンセプトを決めることで、マーケティングの方向性を統一しやすくなります。
明確な軸がないとマーケティング戦略に一貫性がなくなり、ターゲットに認識してほしいイメージがうまく伝わりません。
ブランドの印象がばらつくと消費者の認識も曖昧になり、ブランディングが難しくなります。
コンセプトを明確にしてマーケティング戦略に統一感をもたせると、消費者の関心を引きやすくなります。
競合他社と差別化できる
競争が激しい市場の場合、独自のコンセプトがないと他社と区別されにくくなります。
類似した商品やサービスが多いなかで選ばれるには、明確なコンセプトをもち、ターゲットに強い印象を残すことが重要です。
コンセプトを明確にすると自社の強みを一貫して伝えられるだけでなく、消費者の記憶にも残りやすくなり、競争の中でも埋もれにくくなります。
明確なコンセプトをもつブランドは消費者の支持を得やすく、長期的な成長が期待できます。
商品やサービスの魅力を最大限に伝えられる
伝える内容に統一感がないとターゲットに正しく理解されず、消費者の興味を引けません。
コンセプトを明確にすることで、商品やサービスの魅力を最大限に伝えやすくなります。
商品やサービスの魅力がうまく伝わると、企業の収益性の向上が見込めます。
コンセプトの基本的な考え方
コンセプトの基本的な考え方は、以下のとおりです。
- 「誰に、どうなってほしいのか」を考える
- 企業目線ではなく消費者目線で考える
- シンプルな言葉で表現する
- 他社にはない独自性を追求する
コンセプトの作り方を知る前に、基本的な考え方から押さえておきましょう。
「誰に、どうなってほしいのか」を考える
運営方針は企業によって様々ですが、多くの場合「顧客に満足してもらう」という考えが根底にあると思います。
この顧客満足を言語化するために「誰に、どうなってほしいのか」を考えるのがコンセプトの基本的な考え方です。
例えば、健康志向のカフェを開く場合「30代の女性にヘルシーで健康的な食事を楽しんでほしい」といった視点をもつと、コンセプトが明確になります。
このように具体的なターゲット像と提供価値を明確にすることで、メニューや店内の雰囲気、プロモーションの方向性が統一されます。
結果として消費者に刺さるブランドメッセージを発信しやすくなり、共感や支持を得やすくなるのです。
企業目線ではなく消費者目線で考える
魅力的なコンセプトを作るには企業目線ではなく、消費者の視点に立って考えることが大切です。
企業が伝えたいメッセージだけを優先すると、消費者に響かない内容になりがちだからです。
例えば「最高品質の素材を使った化粧品」と伝えるだけでは、消費者にとって具体的なメリットがわかりません。
消費者目線で考えると「敏感肌の人が安心して使える低刺激の化粧品」という表現が考えられます。
消費者が抱える悩みを深く理解したうえで言葉を選ぶのがポイントです。商品やサービスがどのように役立つのかを伝えることで、消費者にとって魅力的なコンセプトになります。
シンプルな言葉で表現する
コンセプトは、ひと目で理解できるシンプルな表現が望ましいです。
複雑な言葉や専門用語を多用すると、顧客にとって理解するのが難しいコンセプトになるからです。
また、長い文章よりも短く端的な表現のほうが印象に残りやすくなります。
「毎日の料理を手軽にするキッチン家電」「家族で楽しめるスポーツイベント」など、一言でイメージできる表現が理想です。
他社にはない独自性を追求する
コンセプトを考える際には、競合との差別化も意識しましょう。
同じ市場で似たような商品やサービスがあふれているため、独自性がないと埋もれてしまうからです。
独自性をアピールするポイントは、自社の強みを活かした特徴を打ち出すことです。
例えば「伝統製法で作る手作りパン」「地元農家と提携した新鮮野菜を使うレストラン」など、他社にはない強みをアピールすると魅力的なコンセプトになります。
独自性を打ち出すことで消費者にとって特別な存在となり、選ばれるブランドにつながります。
ブランドコンセプトの作り方5つの手順
コンセプトの基本的な考え方を理解したかと思いますので、次は作り方について解説します。
ブランドコンセプトの作り方は、以下のとおりです。
- 市場や競合などを調査する
- ターゲットを考える
- ターゲットの課題や悩みを明確にする
- 課題や悩みを解決する方法を考える
- 抽象化されたシンプルな言葉でまとめる
手順に沿って1つずつ解説します。
手順1:市場や競合などを調査する
自社のポジションを客観的に把握するために、市場や競合などを調査します。
調査する際には、3C分析や5W1Hなどのフレームワークを使うと効率的です。
外部環境と内部環境の両方を考慮して自社のポジションを確認し、市場全体の動向を調査しましょう。
手順2:ターゲットを考える
続いて、自社のターゲットの属性について考えます。
例えば、以下の属性があります。
- 性別
- 年齢
- 職業
- 居住地
- 家族構成
ターゲットの属性を考えることで、具体的なニーズや興味関心などを把握しやすくなります。
今回は、以下をターゲットにして話を進めます。
- 女性
- 20代
- 営業職
- 東京都
- 1人暮らし
手順3:ターゲットの課題や悩みを明確にする
先ほど設定したターゲットの課題や悩みを考えます。ターゲットのもつ不満やニーズを洗い出していきましょう。
今回は、以下のような悩みを考えました。
- 忙しくて自炊する時間がない
- 外食が多くて健康面が気になる
- 趣味に使える時間が少なくてストレスが溜まっている
「ターゲットの課題や悩みがよくわからない」という方は、自社や競合他社の商品・サービスのネガティブな口コミを参考にしてみてください。
ネガティブな意見に、ユーザーが感じている不満が隠れています。
手順4:課題や悩みを解決する方法を考える
ターゲットの課題や悩みを明確にしたあとは、以下のような解決策を考えます。
- 手軽に栄養バランスをとれる食事を提供する
- 低カロリーで満足感のあるメニューを開発する
- SNSやアプリを活用し、簡単に注文・予約できる仕組みを整える
自社の強みとマッチする解決策を見つめるためにも、なるべく多くの解決策を考えましょう。
競合他社にはない、自社独自の強みを含めた解決策が理想です。
手順5:抽象化されたシンプルな言葉でまとめる
ここまで考えてきた解決策をシンプルな言葉でまとめます。
先ほど考えた解決策をシンプルな言葉にまとめると、以下のようになります。
- 忙しくても健康的な食生活をサポート
- 外食でもヘルシーな選択肢を提供
- 時短で楽しめる健康志向の食事
- 健康と時短を両立する新しい食習慣
- スマホで簡単オーダー&スムーズな受け取り
洗い出した複数の解決策をシンプルな言葉で表現することで、ユーザーに刺さるコンセプトを見つけやすくなります。
ブランドコンセプトの例文
以下3つの業界で、ブランドコンセプトの例文を紹介します。
- 食品業界
- 美容業界
- 建築業界
ブランドコンセプトを考える際の参考にしてみてください。
食品業界
ブランドコンセプトの例文 | 概要 |
---|---|
家族みんなが笑顔になる、やさしい味わいの手作り食品 | 家庭の温もりを感じる味を追求し、子どもから大人まで安心して楽しめる食品をお届けする |
忙しい毎日を支える簡単・時短の健康食品 | 忙しくても栄養バランスを妥協せず、手軽に食べられるヘルシーな食品で現代人の健康をサポートする |
素材本来の味を大切にする無添加食品 | 厳選した自然の恵みを活かし、余計な添加物を加えずに仕上げた食品を提供する |
企業目線ではなく、顧客にとってメリットを感じる言葉でまとめました。
美容業界
ブランドコンセプトの例文 | 概要 |
---|---|
敏感肌にも優しい低刺激のナチュラルスキンケア | 厳選した自然由来成分を使用し、肌に負担をかけない処方で、美しさと健やかさを叶える |
一人ひとりの個性を引き出すオーダーメイドコスメ | 肌質やライフスタイルに合わせたスキンケアで美しさをサポートする |
時短×高機能で美しさをもっと手軽に | 忙しい日常でも短時間でケアできる高機能コスメを提供し、自信あふれる肌へ導く |
「敏感肌で肌荒れを起こしやすい」「仕事で忙しくてスキンケアの時間がとれない」などのターゲットの課題や悩みを解決することを念頭に、コンセプトを考えました。
建築業界
ブランドコンセプトの例文 | 概要 |
---|---|
暮らしやすさを追求したオーダーメイドの家づくり | 一人ひとりのライフスタイルに合わせた設計で、心地よく過ごせる理想の住まいを実現する |
都市に癒しを生み出す緑と調和する建築 | 屋上庭園や緑化技術を活用し、都市のなかでも自然を感じられる快適な空間を創造する |
自然と共生するサステナブルデザインの住まい | 環境に配慮した素材や設計を採用し、快適さとエコロジーを両立させた住空間を提供する |
「緑化技術」「サステナブルデザイン」など、自社の強みをアピールできるコンセプトを考え、シンプルな言葉でまとめています。
コンセプトの事例一覧
ここでは、実際に企業が発信して成功したコンセプトの事例を紹介します。
- スターバックス
- ダイソン
- ココナラ
自社のコンセプトを考える際の参考にしてみてください。
スターバックス【サードプレイス】

世界的なコーヒーチェーンであるスターバックスは「サードプレイス(第3の場所)」をコンセプトに掲げています。
コーヒーや食事の提供ではなく、空間を提供するカフェとして多くの支持を得ています。
スターバックスは「おしゃれで過ごしやすい空間」を実現しており、長く滞在する方も多いです。
コンセプトを軸にして店舗を展開した結果、スターバックスは世界的なカフェとして成功しています。
ダイソン【吸引力の変わらないただ一つの掃除機】

掃除機を主に販売している電機メーカーのダイソンは「吸引力の変わらないただ一つの掃除機」というコンセプトを掲げています。
多くの消費者が掃除機に求めている機能「吸引力」に関して、一言で高機能であることが伝わります。
ダイソンは安価な掃除機と比較すると高価格帯の商品ですが、コンセプトで機能性の高さをアピールできているため、掃除機業界において世界的なシェアを獲得しているのです。
「吸引力の高い掃除機といえば、ダイソン」これがダイソンの確立したブランドです。
自社商品の強みである吸引力をうまく伝えている事例でした。
ココナラ【全てがそろうサービスマーケットプレイスへ】

ココナラは、個人のスキルを気軽に売り買いできる日本最大級のスキルマーケットです。
「全てがそろうサービスマーケットプレイスへ」をコンセプトに掲げており、Webサイト制作やマーケティングなど、幅広いサービスが出品されています。
仕事を依頼したい人と受けたい人をマッチングさせるサービスはほかにもありますが、ココナラの強みはサービスの豊富さです。
実際にココナラの「すべてのカテゴリ」を調べると、653,526件のサービスが検索結果に表示されました(2025年2月時点)。
コンセプトのとおり幅広くサービスを展開することで、日本最大級のスキルマーケットとして成功を収めています。
コンセプトを考える際に便利なフレームワーク3選
ここでは、コンセプトを考える際に便利なフレームワークを紹介します。
- 3C分析
- 5W1H
- カスタマージャーニー
コンセプトの作成に活用してみてください。
3C分析
3C分析は、市場環境を整理することで自社の強みを明確にできるフレームワークで、以下3つの要素で成り立っています。
- 市場・顧客(Customer)
- 競合(Competitor)
- 自社(Company)
顧客のニーズや市場の動向、競合の特徴や戦略などを調査したうえで、自社がどのような価値を提供できるのかを考えましょう。
例えば新しいカフェを出店する場合、ターゲットの好みを分析して競合店と差別化できるポイントを探すことで、自社が提供できる価値が見えてきます。
自社が提供できる価値を明確にし、シンプルな言葉でコンセプトにします。
3C分析を活用すると、外部環境と自社のリソースをバランスよく考慮したコンセプトを設計可能です。
5W1H
5W1Hは、情報や物事を整理する際に用いるフレームワークで、以下の要素で構成されています。
- Who(誰に)
- Why(なぜ)
- What(何を)
- When(いつ)
- Where(どこで)
- How(どのように)
上記6つの要素を整理することで、コンセプトの方向性を明確にできます。
例えば、新しいアパレルブランドを立ち上げる場合、以下のように考えます。
- 20代女性(Who)
- 手頃な価格で高品質な服を届けたい(Why)
- シンプルなデザインの服(What)
- 仕事終わりの夜(When)
- オンラインショップ(Where)
- SNSを活用した販売戦略(How)
5W1Hを活用すると、ターゲットの属性やニーズが見えてきます。
カスタマージャーニー
カスタマージャーニーとは、ユーザーが商品やサービスを認知してから購入するまでの流れを分析するためのフレームワークです。
ユーザーの視点に立ち、どのような課題や悩みがあるのかを考えることで、効果的なコンセプトを設計できます。
例えば、フィットネスジムのカスタマージャーニーは以下のようになります。
- 運動不足を感じる(認知)
- 手頃な料金のフィットネスジムを見つける(興味・関心)
- 初心者でも気軽に運動できるジムを探す(比較・検討)
- 契約して通い始める(利用)
- 楽しく運動できるので友人にも勧めた(リピート・推奨)
このような流れを想定し、各段階でどのような価値を提供するかを考えます。
カスタマージャーニーを活用してコンセプトを作りたい方は、以下の記事を読んでみてください。カスタマージャーニーの作り方を確認できます。
考えたコンセプトの効果的な使い方
「コンセプトを考えたけど、具体的にどうやって使えばいいの?」という方もいると思います。
そこで、考えたコンセプトの使い方を解説します。
結論、考えたコンセプトは以下のように活用可能です。
- ホームページやランディングページにコンセプトを明記する
- 考えたコンセプトを基に自社のストーリーを発信する
- ロゴやパッケージなどのビジュアルにコンセプトを反映する
- SNSで商品を使用している様子を発信する
上記の施策に共通しているのは、自社が考えたコンセプトを消費者に認識してもらうことです。
コンセプトは立てるだけでもマーケティングに活かせますが、消費者に認識してもらうことでより効果を発揮します。
ブランディングを成功させるために、消費者にコンセプトを認識してもらえる施策を展開しましょう。
まとめ:ブランディングを成功させるためにもコンセプトを作成しよう!
ブランドコンセプトの基本的な考え方や作り方などを解説しました。
コンセプトを作ることで、商品やサービスの魅力を最大限に伝えられます。また、競合他社との差別化においてもコンセプトは役に立ちます。
コンセプトを作る際に重要なのは、市場や競合などを入念に調査することです。
入念に調査することで、競合他社にはない自社の強み、ターゲットの課題や悩みなどが見えてきます。
本記事の内容を参考にしてコンセプトを作成し、ブランディングに活用しましょう。