トリプルメディアとは
トリプルメディアとは、メディア戦略を考える際に利用するフレームワークを指します。
企業と消費者をつなぐメディアを3つに分類しており、それぞれのメディアの長所を組み合わせることで、マーケティングに活用できる点が特徴です。
トリプルメディア3つの分類

トリプルメディアは、以下3つに分類されます。
- オウンドメディア
- ペイドメディア
- アーンドメディア
各メディアを1つずつ解説します。
オウンドメディア
オウンドメディアは「Owned(所有している)+メディア」という意味であり、自社で所有しているメディアを指します。
ブログ形式のWebサイトだけでなく、ホームページやコーポレートサイトなどもオウンドメディアに分類されます。
ただし、オウンドメディアはブログ形式のWebサイトを指すことが一般的です。
役割
- ブランディング
- 見込み顧客との関係構築
- アーンドメディアで展開されるコンテンツの発信
自社の商品やサービスに関する有用な情報を発信することで、ブランディングや見込み顧客との関係構築が可能です。
費用
オウンドメディアの費用は、内製か外注するかで大きく異なります。
内製する場合は、レンタルサーバー代やツール代などで月数万円が相場です。
一方、外注する場合は月20~100万円ほどの費用を要します。
依頼する作業内容によって費用は異なり、基本的な運用代行であれば月20~30万円、コンテンツ制作を含む総合的な運用であれば月100万円を超える場合もあります。
メリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
・自社の資産になる | ・成果が出るまでに時間がかかる |
名前のとおり自社で所有するメディアのため、制作したコンテンツが自社の資産になります。
一方で、ペイドメディアのように費用をかければ露出が増えるわけではなく、成果が出るまでに時間がかかる点がデメリットです。
活用のポイント
オウンドメディアの役割であるブランディングと見込み顧客との関係構築につなげるには、ユーザーの課題や悩みを解決する「お役立ち情報」を発信することがポイントです。
お役立ち情報を発信してユーザーの課題や悩みを解決すると、信頼を得られます。
信頼を得られるほど自社商品やサービスの成約につながり、結果として企業の収益性が向上します。
オウンドメディアの運用を始める方は、ユーザーの課題や悩みを解決するお役立ち情報の発信を意識してみてください。
>関連記事:オウンドメディアを立ち上げる7つの手順!費用相場や成功事例も解説
ペイドメディア
ペイドメディアは「Paid(払う)+メディア」という意味で、リスティング広告やSNS広告など、費用を払って利用するメディアを指します。
役割
- 新規顧客の獲得
- ブランディング
- オウンドメディアへの誘導
ペイドメディアの役割は何といっても、新規顧客の獲得です。費用さえかければ、不特定多数の消費者にすぐアプローチできます。
自社商品やサービスを知ってもらうきっかけにもなるため、ブランディングにも効果的です。
費用
ペイドメディアは、3つのメディアのなかでも特に費用がかかります。
テレビCMや新聞広告と比べて費用を抑えられるWeb広告でも、クリックや閲覧数に応じて永続的に課金が発生します。
メリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
・成果が出るのが早い | ・永続的に費用が発生する |
すぐに成果を出しやすい点は魅力ですが、一方で永続的に費用が発生する点がデメリットです。
注意を払わないと「売上より費用のほうが高くて赤字」となりかねません。
ペイドメディアを運用する場合は、細心の注意を払って費用を管理することが大切です。
活用のポイント
ペイドメディアを活用するには、ターゲティングの精度が重要です。
不特定多数の消費者にアプローチできるメリットは、裏を返すと「成約につながらないアプローチが増えやすい」というデメリットになります。
ターゲティングの精度を上げることで、ペイドメディアのメリットを活かせます。ターゲティングについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
>関連記事:STP分析のやり方5つの手順!事例や注意点も交えて解説
アーンドメディア
アーンドメディアは「Earned(獲得する)+メディア」という意味で、ユーザーの信頼や支持を獲得することを意味しています。
主に「Facebook」「Instagram」などのSNSを指しており、ユーザーが情報の起点となるメディアです。
役割
- 顧客とのコミュニケーション
- コンテンツの拡散
アーンドメディアの主な役割は、顧客とのコミュニケーションを通して交流を図り、信頼やロイヤリティ(商品やサービスへの愛着)を獲得することです。
また、コンテンツの拡散を通して自社商品やサービスについて認知してもらう役割もあります。多くのユーザーに認知されることで、商品やサービスが成約する機会を増やせます。
費用
ユーザーが情報発信の起点となるため、基本的に費用はかかりません。
メリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
・拡散力が高い | ・拡散をコントロールできない |
拡散力が高いため、自社商品やサービスの認知度向上が期待できます。また、ユーザー自身で拡散しているため、情報の信ぴょう性が高い点もメリットです。
一方で、炎上によるマイナスイメージの拡散が起こる可能性もあり、ネガティブな拡散をコントロールできないデメリットもあります。
活用のポイント
拡散力が高い一方で炎上のリスクがあるため、投稿の表現や内容に注意を払うことがポイントです。
投稿する前に「情報は正しいか」「傷つける発言をしていないか」などを確認してみてください。
また、自社商品やサービスについての不満が書かれている場合は、放っておくのではなく意見を参考にして改善につなげることが大切です。
顧客のネガティブな声にも真摯に対応することで、自社商品やサービスの品質向上、信頼の獲得につながります。
トリプルメディアをうまく連携させるマーケティング戦略
今回紹介したメディアは単体でも効果を発揮しますが、うまく連携させるとより高い効果が期待できます。
例えば、オウンドメディアで発信した情報をペイドメディアやアーンドメディアで拡散する方法が考えられます。
そして、ペイドメディアやアーンドメディアからオウンドメディアへ新規顧客を誘導し、オウンドメディアで見込み顧客との関係を構築するのです。

オウンドメディア単体での運用に比べて、より早く集客できます。
このように、各メディアを単体で運用するのではなく、3つのメディアをうまく連携することで、よりマーケティングにおいて高い効果を発揮します。
トリプルメディアの成功事例
ここまで各メディアの特徴や活用のポイントなどを紹介しましたが、マーケティングに活用するイメージが湧かない方もいると思います。
各メディアの成功事例を紹介するので、参考にしてみてください。
オウンドメディア
オウンドメディアで紹介する事例は「トヨタイムズ」です。
「モビリティーカンパニー」への変革を掲げて挑戦し続けるトヨタの「今とこれから」を追いかけています。
サイトを見ると、豊田章男会長の言葉やトヨタを支える職人たちの言葉が掲載されています。
未来に向けて挑戦し続けるトヨタに好感を抱く方も多く、現在でも大きな支持を集めている人気メディアです。
ペイドメディア
ペイドメディアで紹介する事例は、スポーツジム「ライザップ」のテレビCMです。
芸能人のビフォーアフターが印象に残っている方もいるのではないでしょうか。
数秒でダイエット効果をうまく宣伝しており、ライザップの認知度向上につなげました。
アーンドメディア
アーンドメディアで紹介する事例は、ホテル紹介メディアの「Check in」です。
Check inはInstagramを運用しており、おしゃれできれいな写真と大きな文字にこだわった投稿で支持を得ています。

出典:Check in
画像や動画などがメインのSNSであるInstagramの特徴を活かし、宿泊施設に興味をもつ消費者から支持を集めることに成功しました。
トリプルメディアについてよくある質問
最後に、トリプルメディアについてよくある質問にお答えします。
PESOモデルとは何ですか?
PESOモデルとは、以下4つの要素で構成されているフレームワークです。
- P:Paid Media(ペイドメディア)
- E:Earned Media(アーンドメディア)
- S:Shared Media(シェアードメディア)
- O:Owned Media(オウンドメディア)
従来のトリプルメディアに「シェアードメディア」という要素を加えることで、SNS時代における情報拡散の重要性を強調しています。
トリプルメディアとPESOモデルの違いは?
トリプルメディアとPESOモデルの主な違いは、SNSの扱いです。トリプルメディアは、SNSをオウンドメディアやアーンドメディアに含めて考えます。
一方、PESOモデルはシェアードメディアとしてSNSを独立させて扱う点が違いです。
消費者によるシェアや拡散を重視したシェアードメディアを取り入れたPESOモデルは、現代のマーケティングにおいて重要なSNSにより適応した考え方といえます。
トリプルメディアは古いフレームワークでは?
トリプルメディアは現代のマーケティングにおいて効果を疑問視されることもありますが、現在でもメディア戦略の基本として採用している企業も多くあります。
3つのメディアを組み合わせることで、マーケティングにおいて高い効果が期待できます。
PESOモデルが必ずしも優れているわけではなく、メディア運用の目的や戦略によってフレームワークを使い分けることが大切です。
トリプルメディアを選ぶ際のポイントは?
「1つでも大変なのに、3つも同時に運用してられない」という企業もあると思います。
3つ同時に運用できると理想ですが、どれか1つを選ぶ場合は以下がポイントになります。
オウンドメディア | 長期的な資産を築きたい |
ペイドメディア | 費用をかけてでもすぐに成果を出したい |
アーンドメディア | 自社商品やサービスの認知度を高めたい |
短期的な成果を望む方はペイドメディア、長期的な成果を望む方はオウンドメディアとアーンドメディアがおすすめです。
まとめ:トリプルメディアを活用してマーケティングを加速させよう
トリプルメディアの基礎知識やマーケティング戦略などを解説しました。
単体でも効果を発揮しますが、3つのメディアをうまく連携させることでより高い効果が期待できます。
本記事の内容を参考にしてトリプルメディアを活用し、自社のマーケティングを加速させましょう。
【参考文献】
- 山口 耕平、徳井 ちひろ「オウンドメディアのやさしい教科書。」 エムディエヌコーポレーション、2018年
- 平山 高敏「ステークホルダーを巻き込みファンをつくる!オウンドメディア進化論」宣伝会議、2023年